昭和22年、故郷の宮野目に進一は戻っていた。目の当りにした戦場の凄惨さと自分一人生き延びた事への罪悪感でその身を焼かれるような思いを抱いて。そして言わずもがなの思いを抱いていた幼なじみの嘉代はすでに勇吉と結婚していた。
村は戦争を超えて新しい時代へと動き始めていた。葛神楽の庭元、徳幸らの計らいで九月の本宮祭に進一は舞うことになった。全ての懊脳を振り払うかのように、まるでとる憑かれたように彼は舞う。
祭りの直前、カスリン台風が襲来した。嵐は村を揺るがし北上川は田畑を覆った。権現舞の頭を納めている神社さえもが危ない。進一は神社へ急ぐ。台風が過ぎ去って進一の姿も神楽の頭も忽然と姿を消していた。村人たちはいぶかるばかり。進一は、そして頭はいったい・・・。
年も明けた昭和23年早春、神社の前で朦朧としていた進一は仲間たちの中でようやく自分を取り戻す。村は台風の深い痛手から立ち上がろうとしている。妹サキと昭正の恋の行方もどうなる事やら。
秋になって台風は再び襲ってきた。繰り返される悪夢に村人たちは神をも恨む思い。進一は今こそ祭をと提案する。気まずかった勇吉にもこれまでの自分の思いを話し、村を守り立てていこうと約束する。神楽囃子が聞こえてくる。村は活気を取り戻してゆく。
戦争や台風に苛まれ傷つきながらも伝承芸能を守って生き抜いてきた村の姿を、一人の若者の成長を通じて描いた花巻市民手作りの舞台。どうぞご期待ください。 |