そう、あれは十二年も前になるかしら、若かったわ私。一人で岩手に旅行した時の話。宮沢賢治探訪?そんなんじゃないわよ。ただふらっと何の気なしに。ついでに賢治ってとこかな。でね、そん時に不思議な体験しちゃったのよ。そう、始まりは霧がたちこめる花巻駅のプラットホームだったわ。そこに変な男が現れて、いつの間にか私は別世界へ連れて行かれて。そこでいろんな人たちに出会ったの。狐を連れた小十郎、虔十公園林の子供達、狼と雪婆んご、霧の男ガドルフ、チュンセとポンセ。ワインが好きなブドリ。みんな次から次と現れて、私をそれぞれ賢治の世界に引っ張り込むの。それだけじゃないわ、私の心の奥底にあるものを一つ一つ掘り出して遊んでしまうのよ。まるで宝探しでもするように。
・・・・・・それが第八回目の公演「霧のイーハトーブ」。
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