戦後まもない雑多としている花巻に進駐軍などの入り混じった悲壮な人々の中にあった若い電車の運転手精治と車掌の詩子は少しでも夢と希望をと、仲間たちと楽団結成へと乗り出した。第一回の発表会へと日々練習を重ねて、いよいよ発表会の日、GIに精治の大切なトランペットが奪われてしまった。途方に暮れている時、姉の銀子が必死の思いでトランペットを手に表れる。それは、銀子がGIを刺してまで奪ってきてくれたものだった。それから、少しづつ、人生の歯車が狂い始めてきた。
そして昭和四十四年。いろいろな人々を運び、思い出を乗せて走った『デハ三号』が時代の流れにおされ終わりを告げた。そんな思いをこめて高らかにトランペットの音が響いていた。”チンチン電車”に感謝を込めて・・・。 |